
『ベートーヴェン捏造』――笑いよりも、心に残る“静かなざわつき”
脚本がバカリズムさん、ベートーヴェン役が古田新太さんと聞いて、「これは観たい!」と思った。
主演は山田裕貴さん。名だたる作曲家たちを名バイプレイヤーと言われる個性派の俳優陣が演じている。こんなユニークなメンバーがそろっていて面白くないわけがない。
“笑える音楽映画”を想像していたけれど、実際はずっと深いテーマを突きつけてくる作品だった。
個性的な俳優さんたち
シンドラー:山田裕貴 ベートーヴェン:古田新太 ヨハン:小澤征悦 ブロイニング:生瀬勝久
ヴェーゲラー:遠藤憲一 ウムラウフ:野間口徹 シュパンツィヒ:小手伸也 ホルツ:神尾楓珠
セイヤー:染谷将太


「偉大な天才音楽家ベートーヴェンのイメージは、実は秘書シンドラーによるでっちあげだった」――。
この設定を軸に展開される映画『ベートーヴェン捏造』。
物語は、音楽史の影に潜む“虚構”を、ユーモアを交えながらも鋭く描いていく。
バカリズム脚本ならではの知的な皮肉や、時折くすっと笑える会話の妙も健在。
しかし、全体を包むのはむしろ“笑い”ではなく“冷たい現実”。
歴史に名を残すための嘘、誰かを守るための嘘――その境界が曖昧になる中で、
「真実とは何か?」という問いが静かに心に残った。
古田新太さん演じるベートーヴェンは、圧倒的な存在感で“人間くさい天才”を体現。
そして山田裕貴さんのまっすぐな眼差しが、作品の軸を支えている。
重すぎず軽すぎず、観る人の中にじんわりと残る不思議な余韻。
もっと笑うかと思っていたのに、観終わったあとのあのざわつきは何だろう。
私にとってのベートーヴェンは、ピアノで習う「エリーゼのために」。
そして誰もが知る「第九」や「運命」。
ピアノではバッハの練習曲に進み、そこで終わった。
聴くのはチャイコフスキーやサン=サーンスなど、旋律の美しい音楽が好きだった。
でも、この映画を観て、ベートーヴェンについてもっと知りたくなった。
彼の音楽だけでなく、昔習ったクラシック音楽をもう一度“自分の耳”で聴き直してみたいと思う。
私の胸に残ったざわざわした余韻。
不思議な作品。さすがバカリズム!
わたしの中のベートーヴェンは、今日から少し違う顔になった。
