
喫茶店の扉をひらくたび、時代と作家の声が聞こえる。──『おいしいアンソロジー 喫茶店』
心地よい贅沢な時間。
『おいしいアンソロジー』(大和書房)は名だたる作家たちによるエッセイ集です。
最初に出会ったのは、『おいしいアンソロジー 喫茶店』。
”喫茶店”をテーマに一流の作家の手にかかるとこんなにも面白い体験ができるなんて。

阿刀田高の『コーヒーとの長いつきあい』から始まり、
村松友視、平松洋子、山口瞳…と続いていきます。
文章を追っていると、まるで自分も作家と同じ喫茶店の席に座っているようで、
作家が楽しんでいる空間をわくわくしながらチラ見している気分。
常盤新平の『しぶさわ』では、自分もカウンターに座って店内の客の会話に耳を傾けている。
夜9時過ぎに、1人文庫本を読みながら店の入口を気にする若い女性を気遣い、
待ち人が現れて一緒にホッとする。
喫茶店は単なる“店”ではなく、特別な空間だとあらためて感じました。

片岡義男の『初体験 モーニング・サーヴィス』は、作家のモーニング初体験エピソードを追体験。
自分がモーニングを初めて食べた時のわくわく、こんな感じだったかもしれないです。
そして山口瞳『国立 ロージナ茶房の日替わりコーヒー』は、自分も知っている喫茶店が登場。
作家が店に入る前に窓から店内の様子を覗く時は、自分も一緒に店内を覗いていた(笑)
ロージナの歴史を感じながら、国立という町と店の魅力を思い出していました。
どのエッセイも、作家の目を通し、それぞれの「時代」「空間」を体感しながら、
“喫茶店”という不思議な居場所を感じることができ、わくわくする贅沢なひと時を味わえます。
わたしにとっての喫茶店って、どんな場所だったかな?
思い出の喫茶店てあったかな。
そんなことを思い返すきっかけにもなりました。
